女性は黒足袋を履かない
着物姿の女性が履く足袋の色といえば、ほぼ白ときまっている。胸もとをつつむ半えりの白とともに、見る者に清々しい印象を与えるものだ。
男性はといえば、白足袋は滅多に履かない。男の白足袋は切腹のときときまっていたからである。足袋といえば木綿が主流だが、この歴史はそう古くない。
元禄年間に侍が履いていたのは革足袋。ほかに麻足袋、絹足袋とあったが、木綿足袋を履くことができたのは歴代将軍ぐらいのものだった〝革足袋は臭くてかなわない〟といったことが、当時の吉原の記録に書かれてある。
木綿はもちろん舶来品で、ふつうの侍においそれと手が出せる値段ではなかった。徳川家康などが、白木綿の地に金で巴紋を押した豪華なものを愛用していたらしい。主流は模様か色染めで、黒足袋はやがて儀式に際して履かれるようになった。
さて、女性のほうは黒足袋を履かない。もとをたどれば、女性は神に使える存在。清浄な色、白装束に白足袋を身につけることが、本来の姿とされていたのである。
結婚式に際して、花嫁はこれからどんな色にも染まるから白い衣装というのはあくまでも俗説だ。現代の若い女性たちは、カラフルなストッキングをはくので、こんなタブーはもう関係ないが……。