山は神聖な場所、タブーのかたまりだ
昔から、山を畏敬すべき存在として、崇めたてまつる地方は多い。奈良県桜井市の三輪山などは、さしずめその典型であろう。
三輪山のふもとには、日本最古の神社といわれる大神神社がある。祭神は大物主大神、別名三輪明神とも呼ばれるが、この神社には本殿はなく、三輪山自体が神体なのである。
現在でも神官しか行くことのできない禁足地がいたるところにあり、また、一般人が入山する場合でも、神社の前で必ず身を清めてから、入らなくてはならないとされている。
神霊の憑依するといわれる老木や特殊の形状を持つ樹や巨石は、しめ縄で囲まれており、手を触れたり汚したりすることは固く禁じられている。
これらを写真に撮ることもタブーで、この禁を破って祟りにあった者も数多いときく。
三輪山に限らず、このほか山中でのタブー行為としては、口笛や笑い声、また危険や不浄にかかわる言葉を口にしないということなども、特に山入りの機会の多い地方では、一般化しているようである。豊かな恵みを与え、人々を守ってきた山は、同時に底しれぬほどの畏怖をも人間に与えてきたようだ。