赤不浄というタブーがありまして
初潮、処女喪失(結婚)、そして、出産──女性というものは、血を流しては次第に生まれ変わっていく生き物のようである。
そして、そのたびごとに、周囲の者は赤飯を炊いて祝ってきた。しかし、その反面、昔の日本では、女性が流す血を不浄のものとして忌む風習もあった。
これを死の忌みである黒不浄に対し、赤不浄と呼んでいたのである。産屋を別に建てたり、妊婦が神社にお参りしてはならないなどといった禁忌も、この赤不浄の考えから発している。
昔は、月経のときも似たような忌みをしたらしい。愛知県幡豆郡佐久島では、昔、家の人口付近に一メートル四方の小室があった。
家の女はコヤ(月のもの)のときは、食事は別の火で煮炊きをし、そこで食べたそうである。そして、コヤがあけると、海中で体を洗い、家族とともに食事をした。
これを佐久島では、アイビを食うと称している。おそらく相火で食べるという意味なのであろう。これらの禁忌は、いずれも神々に対して清浄さを重んずるという、日本人特有の精神の発露である。
日本の神々はよほど清潔好きだったのだろうか。そのおかげで、被害をこうむったのは、女性たちばかりである。どうも昔の男尊女卑の社会構造が窺いしれるような話である。