座ぶとんを開いたまま出すのはホントは不作法
座ぶとんに限った話ではないが、ふとんとはもともとたたんであるのを開いて敷くものだ。
芝居を見ていると、こんなシーンに出くわすことがある。舞台の上で役者が座ぶとんを人前に出すとき二つに折って折り目を手前にして持ってゆき、主人の横に坐り、いったん座ぶとんを広げてからずらして主人に敷かせる。
かつては、めんどうでもこのやり方が正式作法だった。ものを開くということは縁が開かれることに通じ、つまりはそこにおめでたい意識があるのだ。
また座ぶとんを目の前で開いて見せることによって、タネもシカケもありません、安全ですよと相手の警戒心を解く意味も込められているらしい。
座ぶとんの作法は、茶道の礼儀作法がもとになってできている。お茶ぶとんは綿が少なくて薄い。だから簡単にたたむことができたのだ。
しかし、茶道の作法とはいえ実際のお茶席では初めから座ぶとんは敷いておくもの。人が坐ってから改めて出すわけではない。
この影響がやがて家庭生活にもあらわれて、今ではやはり前もって座ぶとんを敷いておくようになった。開いたまま出すのが当然のようになってしまってはいるが、本来の作法から考えればタブー。
芝居の舞台で見られるようにするべきなのだ。二つ折りにした座ぶとんを相手の側面からサッと広げる、そんな心使いから思わぬ縁が開けてくるものなのかもしれない。