鏡餅は刃物で切らない
正月に、自分が最も大切とするものに餅をそなえたのが、鏡餅のはじまりである。仏壇に供え、先祖崇敬の念をあらためたり、帳場の神棚に供えて商売繁盛を願うのはよく見かける光景だ。
鏡開きは一月十一日に行うのが常だが、徳川時代までは二十日ときまっていた。武士なら刃柄によせ、婦人は鏡台に供えた餅を、毎年二十日におろして食べたのだ。
十一日にあらためられたのは、二代将軍秀忠が一月二十日に逝って後のこと。また、正月早々〝切る〟というのも縁起が悪いので〝開く〟という言葉を用い、〝鏡開き〟というようになった。
刃物を避け、弓弦で引いて切るならわしも、縁起をかついだゆえに生じたものだ。