早死にするから帯を切ってはならぬ
妊娠五カ月を祝う〝帯祝い〟ちょうど今の七五三にあたる〝帯結び〟の儀式など帯にまつわるわが国の風習。儀式は昔から数多くみられる。
実際、古事記のなかにも帯に関する記述があるほどだ。今日では帯は後ろで結ぶものとなっているが、昔は前で結ぶこともあった。
江戸中期には人妻は前結び、未婚の女性は後ろ結びをする習わしがあったため、「うしろ帯もう笑われる年になり」と、若づくりした女性をからかう川柳まで生まれたりもした。
さて、このように日本人の生活と深く関わってきた帯にまつわる俗信も多い。
「早死するから帯を切ってはならぬ」というのもそのひとつだ。これは、夫婦のいづれかが死ぬと、残された配偶者が自分の帯を裂いて棺の中におさめた、という風習から、帯を切ることを嫌って生まれた俗信であろう。
そのほかにも、帯に関する禁忌の俗信としては「長わずらいするので帯を枕にして寝てはならない」「帯を結んだままにしておくと出世できない」などがある。
前者は帯が長いことが長わずらいを連想させるし、実際に枕として使い、帯がよごれるのを戒めたもの。また、後者は結び目が跡となって残るのを嫌ってできた俗信と考えられる。